「対談 現代の争議生活者を語る」より 8
山口 今やっぱりこの解雇が事業計画にも影響しているのです。
ご存知だと思いますけれどもパイロット不足というのは深刻です。
JALはパイロットの首を切りましたが、一人前の副操縦士になるのに
訓練で四、五年かかります。ですから、採用されてもすぐにパイロット
にはなれません。そういう中で私たちパイロット八十一人を解雇して
しまったわけです。破たん後、解雇以前に、希望退職などでパイロット
八百人近くが会社を去りました。そこに加えて希望退職に応じなかった
八十一人が解雇されたわけです。しかも驚くことに私たちを解雇した
のちに、二百人ほどのパイロットが辞めちゃっているのですね。それで
同業他社へ。
田島 それは、愛想を尽かして辞めていった。
山口 愛想を尽かしてです。外国航空会社やLCC(格安航空会社)に
行っちゃいました。だから人数はもう足りないわけです。ところが、
パイロットが足りないにもかかわらず、会社は事業計画を拡大しようと
考えているわけです。路線を延ばしたいけれども延ばせばせないわけです。
かつては自衛隊出身者を採用するとか、外国人の採用などありましたけれども、
また同業他社からの採用、毎年、これもまたできないわけです。
希望退職で辞めた人で戻りたい人もいるわけですが、先輩が首を切られた
ままの状態では自分は戻れないと。つまり争議がなくなれば、戻れる環境が
できるわけです。会社の方も争議が解決しなければパイロット不足が解消できない
ことはわかっているはずです。問題解決の先送りが、結局は事業計画の
行き詰まりをつくっているわけです。(続く)