山口 続けて感想を述べさせていただきますと、労働って働くこと
ですよね。働くことについて「争議」という形でクローズアップ
しているわけですけれど、働くことは、生きることであり、、人間の
尊厳と同時に自己実現ということだと思うのです。ところが、私なんか
「争議」が自己実現の場みたいになっちゃいましたけれども(笑)
本来、生きること、人間の尊厳をバッサリと切り捨てられたことで、
読んでいてすごく共通点が多かったですね。ただJALのたたかいというのは、
出発点で恵まれているということを感じました。第一に日本航空とは
何をしているか、どういう会社かの説明は必要ありませんでした。
パイロットの仕事の内容は誰でも知っているわけですから。知られている
ことは大きなことで、支援を求める上でも楽な点がいくつもありました。
もともとJALのベテラン労働者首切りの狙いは、物言う労働者の排除
であり、労働組合の弱体化を狙ったものなのですが、それにとどまらない
のです。安全に航空機を運行する上で重要な点が四つ言われています。
第一に知識ですね。そして技術と経験。それにプラスされるのがチームワーク
です。JALの百六十五名の解雇は、この経験とチームワークを切り捨てた
わけです。会社側は解雇がうまくいったと思っているかもしれませんが、
長い目で見たら失敗だったと気づくでしょう。もっとも、既に気づいた人が
いるかもしれません。争議団の現状を言えば年齢で切られた機長と客室乗務員
については、全員が六十歳を過ぎました。六十歳になると、年金に助けられる
人も出てきますので、小説に出てくるような状況とは違うかもしれません。
ただ病欠基準で切られた若い人たちは、小説にもあるように大変です。
JALでは航空身体検査上で経過観察をしながら飛んでいたパイロットも、LCCでは
経過観察などしませんから飛べません。争議生活という点では田島さんの小説と
私たちのたたかいの共通点がたくさんありますね。今私たちは全国的な運動の
広がりとカンパや物販で活動が支えられています。(続く)