「時の行路」映画 製作・上映推進会議のブログ

このブログは、田島一さんの『時の行路』『続 時の行路』『争議生活者』(新日本出版社)原作の映画「時の行路」に関するブログです。映画「時の行路」ついに完成しました。スタッフ 企画・中西繁 音楽・池辺晋一郎 脚本・土屋保文・神山征二郎 監督・神山征二郎 今春(2020年)公開。全国で30万人動員目指して頑張りましょう!

「時の行路」完成試写会に臨んで ~  田島 一              田島  一 

 初号完成試写会にご参加いただいた田島一氏に、原作者として、一人の鑑賞者として映画「時の行路」について書いていただきました。

 下記に掲載させていただきます。

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  「日本社会はこれでいいのか」

     ~鮮烈に問いかけた壮大なドラマ~  

 台風一過の9月9日。期待と不安の入り混じった心境で完成試写会に臨みました。思えば、新聞連載を終えた2011年夏の銀座で、「ぜひ映画にしませんか」という、挿し絵を担当くださった中西繁画伯のひと言が始まりでした。焼鳥屋でビールを飲みながらの話でしたが、そこでは正直、実現すると思ってもいなかったのです。あれから8年の歳月を経て生まれた作品を鑑賞できるのですから、感慨はひとしおでした。

 

「非正規切り」された一家の物語と「連帯」の素晴らしさが

神山征二郎監督は、「非正規切り」された主人公の洋介一家の物語を軸に、労働組合との関わりをとおして、働く者が自らの権利を主張してたたかうことの意味、そして、弱者が力を合わせて強者に向かっていく「連帯」の素晴らしさを重厚に描き出していました。同時に、利潤第一で突っ走る大企業を擁護する裁判所の実態も鋭くあぶりだしながら、「これでいいのか」と、格差と貧困にあえぐ日本社会の現在(いま)と未来を、壮大なドラマで鮮烈に問いかけたというのが率直な感想でした。

光る、石黒賢さん中山忍さんの熱演。音楽に魅了されて

 石黒賢さんの洋介、そして中山忍さんの妻は適役で、熱演が光っています。息子の涼一役の松尾潤さん、娘の綾香役の村田さくらさんも清々しく、妻の父親の綿引勝彦さん、弁護士の川上麻衣子さんの渋い演技も精彩を放ちます。三島という地の利を生かした風景、八戸のイカ釣り船、石黒さんが旋盤を扱う場面など、工夫された映像も楽しいものでした。ドラマの進行と一体になって展開される、池辺晋一郎音楽監督の旋律には魅了されます。

人間の美しさと希望が淡々と

 争議生活ひと筋でお金もない主人公が、仲間や支援者からのカンパを持って病に臥す妻を見舞います。そのときの思いを切々と語る妻の回想シーンはハイライトです。洋介の今後は、八戸から東京に着いた夜行バスの早暁の光景と彼の表情に託されています。辛く、哀しい物語なのですが、暗さは微塵も感じられません。それは、神山監督と脚本の土屋保文氏によって、諦めずに希望を持って進む、人間の美しさが淡々と表現されているからでしょう。
 映画は、社会と人間の総体を深く見つめ、芸術創造の困難に挑戦しています。たとえば、非正規雇用で働く人々にとって今日大きな役割を果たしている労働組合のことなども、メディアではほとんど取り上げられません。けれども、そこに光を当て活写した映像の世界は、高く評価されると私は思いました。

思わず目が潤んで…

8年間私は、モデルとなった主人公らを追い小説を書いてきました。取材をしてきた人たちの姿と重なり、思わず目が潤む場面もありました。
この映画を世に送り出すために「草の根の運動」で尽力されたすべての方々に感謝し、生きる勇気を与えてくれる作品を、多くの老若男女が観てくださるよう願ってやみません。
                      (原作者)

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(原作者・脚本家と伊豆の仲間、試写会場入り口にて)