「時の行路」映画 製作・上映推進会議のブログ

このブログは、田島一さんの『時の行路』『続 時の行路』『争議生活者』(新日本出版社)原作の映画「時の行路」に関するブログです。映画「時の行路」ついに完成しました。スタッフ 企画・中西繁 音楽・池辺晋一郎 脚本・土屋保文・神山征二郎 監督・神山征二郎 2020年公開。全国で30万人動員目指して頑張りましょう!                          公式ホームページは、https://www.tokinokouro.kyoudo-eiga.co.jp

「対談 現代の争議生活者を語る」より 7

田島 主人公のモデルとなった五戸豊弘さんのことですが、あの方は

あれを書いてはいけない、これを書いてはいけないとは言いませんでした

から、それはすごくありがたかったですね。ですが、やっぱり、どこかの

集会の場で言われましたよ。「田島さんには俺の恥ずかしい過去とか、

言ってほしくないことも全部バラされました」と。これには、小説書き

というのは因果な仕事と、つくづく思ってしまいました。五味洋介さん

のことは、全体としてほぼ事実なのです。だけれども書いた場面、場面

というのは、どういうふうに書いて、読者のみなさんに読んでいただくか

ということを考えながら創った世界なのです。でもガンで亡くなった奥さん

の夏美さんのこととか、それからお通夜と葬儀に出られなかったというのは

事実ですね。

 だからこんなこともありました。洋介さんは、お通夜に出さないと

言われて、黙って受け入れT県に帰ってくるでしょう。ここに腹が立った

という人がいて、洋介はあれだけのことをやっているのに、なんでもっと

強く出ないのかという感想も寄せられました。でもそこは青森という風土

の中のできごとだったと私は捉えています。

 田島 時間も残り少なくなりましたので、文学の問題からちょっと戻し

ます。山口さんがご著書の中で、「解雇されて世の中が良く見えるように

なった」とおっしゃっていますね。ああ、なるほどと私は思ったのですが。

たとえば乗員組合で委員長をされて、それでずっと飛行機に乗って

らっしゃって、こういう解雇というものがなければ、ご自身の人生は

もっと違ったものになっていたと思うのですけれども。

 争議を選択しますと、決着がつくまでは退路がないですよね。ですから

この七年間のご苦労は計りしれません。たしかに非正規雇用の人たちとは

いろいろな面での差はあると思うのですけれども。経済的、それから

心理的な圧迫といったものは、いすゞのみなさんを見ていると、私の

想像の域を超えて過酷でした。そうした争議生活者としての日々を、

山口さんたちはすでに七年間続けられているわけです。

 私も実は電機の企業の中で三十年間にわたって不当な差別、これは思想

差別ですけれども、それを受けてきた身です。ただ私の場合は、たたかう

ことによって解雇を防ぎ、生活の基盤は最低限、何とか守られるという、

そういう位置にいました。ですから単純な比較はできないのですけれども、

いすゞのみなさんを見ていますと、俺たちは安全地帯にいてのたたかい

だったのかなという感じもしました。JALのみなさんの現在の状況は、

職場復帰に向けての山場に差し掛かっていると理解しています。こういった

ところの進展はどうなのでしょうか。差し支えのない範囲で教えていただければ

と思いますが。(続く)